Dear その日のまえに,

その日なんて、来ないでほしい

kamijyo

2019/03/28

• その日のまえに
• 重松清
• BOOKS

Dearその日のまえに,

ケガをして5週間実家で過ごした。
高校を卒業して東京に出てきてから
こんなに長く実家にいたのは初めてのことだ。

昨年還暦を迎えた母は
「腰が痛い」「蕁麻疹が出た」と
毎日どこかしらの不調を訴えていて
なのに
「医者は嫌いだ」と
病院に行かせるまでに苦労した。

私が元気だと思っていた母は、いなかった。

それでも
毎日ご飯をつくってくれて
洗濯をしてくれて
お風呂あがりには包帯を巻き直してくれた。

私の重い荷物を持って
東京まで連れてきてくれて
しばらく外に出なくてもいいようにと
たくさん買い出しをしてくれた。

別れるときも
バスタまで送って行こうとしたら
「もうここでいいよ」と言ってくれた。

私はというと
そういうところが
ほんとにダメだなと思うんだけど
気恥ずかしくて
「ありがとね、バイバイ」と軽い調子で言い
ヘラヘラと笑って
ゆらゆらと手を振った。

LINEだったら素直になれる。
そう思って
長々と気持ちを綴って送ったら
「お母さんは楽しかったよ」と
ニコニコマークと音符マークが
たくさん並んだ返信が来て
総武線のホームで、わんわん泣いた。

「その日のまえに」を読んで
身近な人の死について考えた。
考えたくないけど、考えた。

私は母になにを返せるだろうか。

返せる時間が
できるだけ長くあってくれたらと思う。

”その日”なんて
一生来ないでほしい。

（写真は私の大好物、母がつくる豚の角煮）

Sincerely,kamijyo